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学術オリンピックにも国の支援を
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STATEMENT

国際学術コンテスト支援制度の対象拡大と透明化を求める署名活動 ── 趣旨文

全文・約3,200字(5〜6分で読めます)

1. はじめに ── 7教科で止まった「丸ごとの支援」

物理オリンピックの日本代表は、国の支援を受けて世界に挑みます。経済学オリンピックの日本代表も、AIオリンピックの日本代表も、言語学オリンピックの日本代表も、国の支援なしに渡航します。同じ「日本代表」でありながら、です。

けれど、国が7教科を支えているのは、代表の渡航費だけではありません。国内大会の運営から、生徒がその学問に初めて出会う裾野の育成まで──一つの分野を、入口から頂点まで丸ごと支えています。問題は、この「丸ごとの支援」が、2004年に引かれた7教科という線の内側で止まっていることです。

その線の外側では、経済学・AI・言語学・天文学をはじめ、新しい分野の国際大会が次々と生まれ、日本の生徒も世界で戦っています。けれど彼らには、国内大会への支援も、代表派遣への支援もありません。

私たちが文部科学省に求めるのは、ただ一つです。いま7教科に対して行われている支援を、これらの分野にも、同じかたちで広げること。それは「どの分野を支えるか」という線を引き直すと同時に、支援を一部の代表だけでなく、その分野を志すすべての生徒に届けることを意味します。

2. 広がった「学術の地図」と、止まったままの制度

国(文部科学省・科学技術振興機構〔JST〕)は、2004年度から「国際科学技術コンテスト支援事業」を実施し、数学・物理・化学・生物学・情報・地学・地理の7教科と国際学生科学技術フェアを対象に、国内大会の運営、代表の選抜・育成、国際大会への派遣、そして普及活動までを支えてきました。この事業が果たしてきた役割を、私たちは強く支持します。

問題は、制度が前提とする「学術の地図」が、設計当時のまま更新されていないことです。

この20年で、学術の国際競技は大きく広がりました。言語学オリンピック(IOL)は2003年から続く国際大会、経済学オリンピック(IEO)は2018年、国際AIオリンピック(IOAI)は2024年に始まり、天文学・天体物理のオリンピックも確立しています。国際的に「国際科学オリンピック」と数えられる大会は12を数えますが、日本の公的支援は、そのうち7つで止まっています。現行事業が対象を「科学技術分野」に限っているため、経済学や言語学は制度上はじめから外れ、AIのような新しい分野も取り残されたままです。

3. 問題は「支援の不在」ではなく、「公的支援の不在」です

誤解のないように記します。これらの大会は、無支援で運営されているわけではありません。AIや経済学では企業の協賛がすでに一定の役割を果たし、国際大会自体も世界的な企業の支援を受けています。民間がすでに価値を認めて動いている──この事実は、むしろ大会の意義を裏づけます。

しかし民間の協賛には、公的支援を代替できない三つの限界があります。第一に、年度ごとの経営判断に左右され、継続の保証がないこと。第二に、AIや経済学のように関心を集めやすい分野に偏り、言語学のように商業的な受け皿の乏しい分野には届きにくいこと。第三に、それでも渡航費・参加費の多くは生徒側の負担として残り、国内大会の運営は無給のボランティアと教員の善意に支えられていること。代表育成の便益は社会全体に及ぶため、民間だけでは必要な水準に届かない──経済学が「公共財の過少供給」と呼ぶ、典型的な構造です。

現に7教科では、公的支援という土台の上に、民間の協賛が重なっています。対象外の分野には、その土台がありません。

4. 世界は、すでに「丸ごと」支えている

新しい分野を国が支えることは、すでに世界の標準になりつつあります。人口約55万人のマルタは、教育省の予算で2024年に言語学オリンピックへ初の代表団を送り出しました。ブルガリアの主導で創設された国際AIオリンピックを、教育科学省が後援し、その財政と運営を支えています。サウジアラビアの国家英才財団は、AI・天文学を含む26の国際オリンピックに代表を派遣しています。

とりわけインドは、原子力省・科学技術省・教育省などが資金を拠出する国家プログラムで、日本では対象外の天文学を1999年から支援し、各教科2万〜6万人が参加する選抜の裾野を国家規模で築いています。支えているのは、代表数名ではありません。その分野に挑む数万人です。

人口55万人の国が言語学の代表団を送り出し、隣の国は数万人規模の裾野を国費で育てる。その一方で、日本の代表は自費で渡航する。「科学技術立国」を掲げ、AI人材の育成を法律にまで書き込んだ国の現状として、これは説明がつきません。

5. 支援が支えるのは、頂点の数名ではなく、入口の数万人

公的支援の意味は、代表数名の渡航費にとどまりません。

米国では、学校単位で実施される数学コンテストAMCに、毎年約30万人・4,000校超が参加します。これは、生徒が初めてその分野の面白さに触れる「興味の入口」として設計された仕組みです。オリンピックの教育的価値は、頂点に立つ数名ではなく、入口に立つ数万人にあります。

そして日本でも、対象の7教科については、国がまさにこの「入口」を支えています。国内大会の運営も、普及活動も、公的支援の対象です。一方、対象外の分野では、その入口を生徒自身が支えています。たとえばAIの日本代表が世界大会に出るための費用(1人あたり約50万円)の原資は、いまも中高生が払う受験料です。言語学も同じ構造で、受験料を下げれば代表が渡航できなくなる。選抜は実力で、出場は経済力で──教育の機会均等を掲げる国の制度として、放置してよい構造ではありません。

私たちが求めるのは、特別な新制度ではありません。7教科にすでに行われている「入口から頂点まで」の支援を、同じように他の分野へ広げることです。現に、地学と地理は事業開始より後に対象へ加わりました。対象を広げる手続きは、この事業自身がすでに経験しています。

6. 私たちの要望

私たちは、文部科学省に対して次の三点を要望します。

一、支援対象の拡大。 AI・経済学・言語学・天文学等の新興・分野横断型の国際学術コンテストを、国際大会としての継続性・参加国数・国内選抜の公平性・学術性・非営利性といった明確な基準に基づき、公的支援の対象に加えること。その支援は、現行事業と同様、国際大会への派遣にとどまらず、国内大会の運営・普及活動を含むものとすること。

二、暫定支援(移行措置)の創設。 制度の見直しが実現するまでの間、日本代表として国際大会に出場する生徒の渡航費・参加費等を支援する暫定的な助成の枠組みを設けること。

三、支援の透明化。 現行制度における分野別の支援額、支援対象の選定理由、成果指標を公開し、配分のあり方を社会が検証できるようにすること。

求めているのは、特定の大会への優遇ではありません。時代とともに広がった学術の地図に、20年前の支援制度を追いつかせること。そして「どの分野を、どこまで支えるか」が、明確な基準と透明な手続きによって決まる仕組みをつくることです。

7. むすびに ── 才能は、足りています

私たちの願いは、一つの設計に集約されます。国がいま7教科に対して行っている「入口から頂点まで丸ごと支える」というかたちを、新しい分野にも広げること。それは、支える分野を増やすことであり、同時に、支援を一部の代表から、その分野を志すすべての生徒へと広げることです。

才能は、足りています。届いていないのは、支援です。

家庭の経済力や住む地域にかかわらず、実力で選ばれた生徒が世界の舞台に立てる国へ。そして、まだ自分の才能に気づいていない生徒にも、その入口が開かれている国へ。一筆のご賛同を、お願いいたします。

発起人:国際学術オリンピック日本代表・経験者有志

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