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学術オリンピックにも国の支援を
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DEMANDS

要望内容 ── 二つの視点、三つの要望

私たちの要望は、二つの視点に整理されます。支援の総量を増やすこと(パイを大きくする)と、支援の配分を見直すこと(配分を考え直す)です。前者がなければ新しい分野は救われず、後者がなければ「どの分野を支援するか」が今後も不透明なまま決まり続けるからです。

視点1:パイを大きくする

要望一 支援対象の拡大

AI・経済学・言語学・天文学等の新興・分野横断型の国際学術コンテストを、明確な基準に基づいて公的支援の対象に加えること。

支援対象は、特定の大会名の列挙ではなく、基準によって定めることを求めます。例えば:

  1. 国際大会としての継続性(開催実績・運営体制)
  2. 参加国・地域数などの国際的な広がり
  3. 国内選抜の公平性・公開性(誰でも応募できること)
  4. 学術性(出題・評価が学術的水準を満たすこと)
  5. 非営利性(営利目的の商業大会でないこと)
  6. 教育的波及効果(国内予選の裾野、教材・普及活動の実績)

基準で定める利点は二つあります。第一に、将来新しい分野が生まれても、制度を改正せずに対応できること。第二に、「なぜこの大会は支援され、あの大会はされないのか」という問いに、制度が自ら答えられるようになることです。

支援の範囲は、現行事業が7教科に対して行っているのと同様、国際大会への派遣にとどまらず、国内大会の運営・代表育成・普及活動を含むものとすることを求めます(普及の設計は後述)。

要望二 暫定支援(移行措置)の創設

制度の見直しには時間がかかります。その間も、毎年、日本代表は世界大会に出場します。そこで、制度改正までの移行措置として、日本代表として国際大会に出場する生徒の渡航費・参加費・引率費等を支援する暫定的な助成枠の創設を求めます。

規模感を示します。対象を【4〜6】大会、代表を年間約【30】名、1人あたりの渡航・参加費を【○○】万円とすると、必要額は年間【○,○○○】万円規模です。現行の国際科学コンテスト関連予算(内閣府AI戦略会議資料で約6.4億円・令和6年度概算要求ベース)の数%の増額で、すべての「日本代表」の渡航が支えられる計算になります。

視点2:配分を考え直す

要望三 支援の透明化

現行制度について、次の情報の公開を求めます。

  1. 分野別・年度別の支援額(どの大会に、いくら配分されているか)
  2. 支援対象の選定理由(推進委員会がどの基準で対象を決めたか、審議の概要)
  3. 成果指標(国内予選参加者数、代表の成績、参加経験者の進路等、支援の効果を測る指標とその推移)

これは現行の支援を減らすための要望ではありません。むしろ逆です。配分と成果が見えるようになって初めて、「どの分野への支援が、どれだけの教育効果を生んでいるか」を社会が検証でき、対象拡大(視点1)の判断を、印象ではなく証拠に基づいて行えるようになります。透明化は、パイを大きくするための前提条件です。

補足:支援対象を選定する「国際科学技術コンテスト支援事業推進委員会」の委員名簿・審議の議事録は、現在ウェブ上で公表されていません(2026年6月時点・本キャンペーン調べ)。要望3は、この公開を求めるものです。

段階的実施案

私たちは、一度にすべてを変えることを求めていません。現実的な順序は次の通りです。

  1. 第1段階(即時)

    現行事業の推進委員会において、支援対象の選定基準を改定する(「科学技術分野」要件の見直し、または新興・分野横断型カテゴリの新設)。あわせて要望3の情報公開を開始する。

  2. 第2段階(次年度概算要求)

    要望2の暫定助成枠を、2〜3大会を対象とする小規模実証として開始する(年間数千万円規模)。

  3. 第3段階(実証後)

    実証の成果指標を検証のうえ、基準を満たす大会への支援を本格化し、国内大会運営・普及活動への支援に拡大する。

普及の設計 ── 「MAA方式」を日本でどう翻訳するか

要望1が「国内大会・普及活動」までを支援範囲に含めるのは、公的支援の真の目的が裾野をつくることにあるからです。ここでは、その設計を具体的に示します。

参考モデルA:米国MAA方式(学校実施型)

米国の数学コンテストAMCは、教員が「コンペティション・マネージャー」として自校で試験を実施する方式により、毎年約30万人・4,000校超の参加を実現しています。物理のF=ma試験も同様です。

この方式の本質は、生徒が探しに行かなくても、学校が入口になることです。大会の存在を知らない生徒、自分から応募する発想のない生徒に、競技の方から届く。情報格差と自己選抜バイアスを同時に解消する設計です。

ただし、日本への単純移植には大きな障害があります。教員の負担です。学校での試験実施は、登録・監督・採点報告の業務を教員に求めます。働き方改革が最優先課題となっている日本の学校現場に、新たな実施業務を持ち込む提案は、現場と文科省の双方から支持を得られません。

参考モデルB:日本のオンライン方式(現行)

一方、日本の新興分野の委員会は、すでに別の解を実装しています。日本言語学オリンピックは2021年からオンライン開催に切り替え、参加資格制限のないオープン枠を導入しました。応募者は245名(2021)→434名(2022)→605名(2023)と急増しています。日本天文学オリンピックも予選をオンラインで実施し、個人申込に加えて学校単位の申込を受け付けています。

オンライン方式は地理の壁と会場コストをゼロにします。ただし弱点が一つ残ります。自分で見つけた生徒しか来ないことです。

私たちの提案:学校を「入口」に、オンラインを「実施」に

二つのモデルの長所を組み合わせます。

  • 実施はオンライン:現行の委員会方式を維持。会場費ゼロ、地理的制約ゼロ。
  • 入口は学校経由:教員の役割は「監督」ではなく「紹介」に限定する。具体的には、①学校単位のワンクリック団体申込、②授業1コマで使える導入教材・体験問題パック、③進路指導・探究学習で使える成績レポートの学校返送。教員に新たな実施業務を求めない設計です。
  • 参加費は公費で引き下げる:現在、言語学では受験料が日本代表の渡航原資になっており、料金を下げれば代表が出場できなくなる構造があります。公的支援が代表派遣の土台を担えば、受験料を下げて入口を広げられます。支援は、漏斗の出口(代表)だけでなく、入口(受験料)を広げるために使われるべきです。
  • ジュニア層への展開:米国がAMC 8(中学生以下)を持つように、確立した分野から段階的に中学生区分を整備します(天文学にはすでにIOAAジュニアが存在します)。

数値目標(案):支援開始から5年で、対象分野の国内予選参加者を現在の計【○】千人から【○】万人へ。学校経由の申込比率を【○】%以上に。

想定される疑問への答え

Q. 民間の協賛で賄えばよいのでは?

協賛はすでに存在し、私たちはそれを歓迎しています。しかし協賛は年度ごとの経営判断に左右されて不安定であり、AIや経済学のように企業の関心を集めやすい分野に偏り、言語学のように商業的受け皿の乏しい分野には届きません。現に支援対象の7教科は「公的支援の土台+民間協賛」の二層構造で支えられており、対象外分野に欠けているのは民間ではなく土台の方です。

Q. 財源はどうするのか?

要望2の暫定支援は年間数千万円規模であり、現行の国際科学コンテスト関連予算(内閣府AI戦略会議資料で約6.4億円と整理・一次資料は確認中)の数%に相当します。新規の大型予算ではなく、既存事業の概算要求における増額・組み替えの範囲で実施可能な規模です。

Q. 学校の負担が増えるのでは?

増えません。私たちの普及案は、米国型の学校実施(教員が試験監督を担う方式)を採用せず、実施はオンラインのまま、学校の役割を「団体申込と紹介」に限定する設計です。教員の働き方改革と両立します。

Q. 支援対象の追加は、制度上できるのか?

できます。実際に行われてきました。現行事業の支援対象に含まれる地学と地理は、いずれも事業開始(2004年度)より後に加わった教科です。日本地学オリンピック委員会は、JSTからの公的資金援助を受けて2007年10月の第1回国際地学オリンピック(韓国)に視察団を派遣し、2008年の初参加につなげたと公表しています。地理(iGeo)も日本の参加は2008年からです。対象の拡大は、この事業自身がすでに経験している手続きです(出典:JST「支援コンテスト一覧」・日本地学オリンピック委員会「沿革」・文部科学省)。

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